職業性皮膚疾患NAVIとは
職業性皮膚疾患NAVIとは
 現在、さまざまな業種において、皮膚疾患を引き起こしやすい化学物質が用いられています。
 就業環境の多くでは、皮膚への対策もなされていますが、原因物質が特定されにくい、就業制限や労災認定を申請するほど自覚症状が強くない、などの理由により対策なく化学物質による皮膚疾患が放置されている場合もあります。内臓の臓器障害に比べ、職業性皮膚疾患に対しては、起因物質へ興味が持たれず、皮膚疾患を積極的に把握している事業所は少ないと言えます。
 特定化学物質障害予防規則(特化則)第44条や労働安全衛生規則(安衛則)第594条では、皮膚に障害を与える恐れがある物質を掲げ、皮膚障害防止用保護具の備え付けや保護具使用を徹底することの重要性が示されています。さらに、リスク低減対策という点においては、保護具の着用は最終手段であり、化学物質の有害情報を早期に収集し、毒性の低い物質への代替や密閉化等が早期に行われるべき対策となります。今後も、皮膚刺激化学物質を使用する機会が減ることは考えにくく、化学物質の有害情報を早期に収集することは重要です。
 以上のような背景より、職業性皮膚疾患に関するデータベースの構築は必須であり、職業性皮膚疾患の全国的発生状況をモニターし、化学物質に関する皮膚への影響を効率的に集積する必要性があります。
 「職業性皮膚疾患NAVI」は、会員へID,パスワードを配布し、会員の匿名性を確保した上で、産業化学物質による職業性皮膚疾患発生時に、事例報告入力フォーマットへ可能な限り報告し、産業化学物質による皮膚疾患の発生状況を迅速に把握するためのシステムです。軽症例や因果関係が乏しい職業性皮膚疾患の症状、原因、対応等については、学会発表がしづらく、参考になるデータが蓄積されにくいですが、産業化学物質による皮膚疾患を診る機会の多い医師が、早期に報告し、情報を共有することにより、信頼度の高い職業性皮膚疾患事例の早期把握が可能となります。
 「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」(The Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:GHS)による表示が国連より通知されましたが、「職業性皮膚疾患NAVI」を中心とした職業性皮膚疾患ネットワークが構築されることにより、皮膚疾患を生じさせる化学物質をより詳細に把握できるようになります。企業内に設置されるMSDS(Material Safety Data Sheet:化学物質等安全データシート)もGHS表示に統一化されていくと思われますが、腐食性/刺激性に関する区分において、「ヒトへの短期ばく露の影響として皮膚を軽度に刺激する可能性が示唆されているが症例報告はない」といった記述も多く、現在のMSDSの内容だけでは皮膚への影響が捉えにくい物質もあります。
 今後、「職業性皮膚疾患NAVI」により皮膚疾患を生じさせる化学物質を把握できるようになれば、世界標準となる皮膚感作性や刺激性に関するGHS統一表示の改定の際にも、多くの情報発信ができます。ネットワークの構築およびデータの蓄積により、今後、信頼性の高い非常に有用な情報が提供可能になります。
 各事業所、店舗で使用されている産業化学物質による皮膚疾患の発生状況を迅速に、気軽に報告していただき、信頼度の高い職業性皮膚疾患事例データの蓄積と会員相互の情報共有により、職業性皮膚疾患対策へ活用されることを期待しております。

職業性皮膚疾患ネットワークセンター事務局: 産業医科大学皮膚科学教室
助教 織茂弘志
助教 日野亮介
教授 戸倉新樹


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